新NISAのスタート。私は「これまでのキャリアで培った能力すべて」を注ぎ込んで、この移行作業に挑みました。マニュアルを読み込み、Excelを叩き、120万円の枠内に収まるよう完璧なシミュレーションを組んだのです。
しかし、現実は残酷でした。
1. 執念の計算を嘲笑う「非情なエラー」
「設定金額が年間枠を超えています」 何度入力しても表示される、その一行。私は混乱しました。何度も電卓を叩き直し、投資金額を精査し、「枠内であること」を何度も確認したはずなのに。
自分の事務処理能力には自信がありました。なのに、なぜ通らない?
その正体は、給与明細の片隅に眠っていた「つみたてNISA奨励金」。 自分の手出し額ばかりに気を取られ、会社が積み増してくれていた「見えない枠」を計算に入れ忘れていたのです。職場NISAという特殊な環境下で、私の「全力を尽くした計算」は、脆くも崩れ去りました。
2. 移行期ゆえの「低速エスカレーター」
追い打ちをかけたのが、当時のWEB手続きの不自由さです。今のアプリのような軽快さはありません。 「1月に動き出しても、実際に運用が始まるのは4月」という、最短4ヶ月待ちのタイムラグ。
- 1月: 予約手続き(ここでの1ミスが致命傷に)
- 2月: 旧設定の終了を待つ
- 3月: 新設定の反映
- 4月: ようやく買い付け
一箇所の入力ミス、奨励金の計算漏れ。それだけで、私の航海はさらに1ヶ月、また1ヶ月と先延ばしにされていく。この「待機という名の砂漠」を歩かされる焦燥感は、言葉にできないほどでした。
3. 困惑の中での「暴走するアクセル」
つみたて枠の設定でエラーを吐き、頭の中が真っ白な状態。そんなカオスの中で、私はもうひとつの決断を下していました。旧NISAの売却益を、「成長投資枠」で一気に再投入したのです。
「3ヶ月の空白を取り戻さなければ」 「とにかく早く始めないと、機会損失になる」
焦りと困惑に突き動かされ、よく分からないまま選んだ「世界」と名のつく商品。まさに「自分の全機能を使って失敗し、ボロボロになった状態」で、荒れ狂う新NISAの海へ、不完全な装備のまま漕ぎ出してしまったのです。
次回、第3回:失敗を「未来の種」へ。AIの論理と、キャプテンの直感が交差する場所
ボロボロになった私に、副操縦士(Gemini)が示したのは冷徹な「正解」でした。しかし、私はその正解をあえて裏切る決断をします。ダボス会議の影を自ら採掘し、舵を握り直した瞬間の物語です。
